過去世物語/共通の過去世
私が特に感じていたのは、彼と付き合い始めて今まで以上にエネルギーに敏感になった事です。少しずつですが、感受性も強くなり透視も鍛えられてしまいました。なかなか霊能者や占い師は自分の事は分からないといいますが、彼にとっても私が代わりに彼を見ることを望んでいた影響もあるかもしれません。
ある時、彼が(自分の後ろに何がいるか見えるか?)とメールで聞いてきました。
仕事中だったので、(見ていられないよぉ)と思っていると…黒い服と天狗が見えました。
後で確認すると、彼のもとに「陰陽師」の師匠がきたと言う事でした。本気でこの仕事をする気があるのか?と詰め寄られたと言うのです。そこから彼の修行が始まっているのですが…この師匠が、かつての私を愛した武士であり自分の過去世だと言うのです。
つまり、彼は、私が占い師に見てもらった所の私の夫であった武士の生まれ変わりだと言う事になります。
徐々に理解していくのですが、武士とは言っても彼の場合は陰陽師として頼朝の片腕であった、つまりブレインとして側にいたようなのです。これは考え次第なのですが、陰陽師であれば、神に仕えていた巫女に対面する可能性は高かったかも等と勝手に想像してしまいました。
そして、彼の名は「雅清(まさきよ)」私の名は「桜衣(とうい)」だったと言います。
私はこの年、初夢を見ていました。たくさんの仲間と一緒にいたところ、突然陰陽師(ブームだったのでTVや映画で頻繁に登場していました)が私に向かって
「お前の行く道はこちらだ。」
と言ったのです。その数日後に彼の告白がありました。
その頃あまり他の夢を見た覚えもなく、リアルだったので、友人に「不思議だ。」と話していました。
雅清はその陰陽師は自分だと言いました。
「当時は(桜姫・さくらひめ)と呼ばれていたみたいだね、俺は(おとう)って呼んでいたらしい。」
え?姫…そういう過去世を聞いて調子に乗っちゃう人が多いんだけど。まあ、私がそうならなければいいのだけれど、と現実との折り合いをつけながら情報を受け取っていました。
その内、彼がまた雅清と会話する中で、鎌倉の当時、一時は残虐的な陰陽師であったと思い出したのです。影の仕事でもあり、栄華の裏には闇ありということでしょうか、冷酷な手段で人を殺していたようでした。もちろん今の時代ではないのですが、そう言ったマイナスの感情が彼を支配してしまうのか、霊能力に対して恐怖感や嫌悪感を持ったこともあったようです。
これは、雅清からの言葉です。
「そなた(桜衣)に会い、人を殺めること、傷つける事の罪を知る事が出来た。伊勢で私の心が解け出した。」
桜衣が神に仕えていた光の部分として彼に言葉を伝えていたのでしょうか。伊勢で心が解け出した、という言葉と、伊勢に旅したときに感じた身包みを剥がされた「不安」と重なると彼は言いました。
彼は、伊勢に行って以来、時々鎌倉時代を思い出そうとすると、戦へ向かう雅清の後ろ姿がちらついて仕方なかったそうです。
その戦が、私から夫を奪った戦なのかもしれない、と思いました。雅清は彼に話かけました。その戦を終えれば、都を離れ桜衣と静かに暮らす約束をしていたそうです。殿(頼朝)の許可も得ていた、最後の戦のはずだったのです。雅清は戦を終えて都に帰る事だけを楽しみにしていた、と。
しかし戦の最中背中を切られ、しばらく民家に逃げのび手当てを受けるのですが、帰らぬ人となったようです。「敵に切られたのではなく、力を妬んだ仲間に裏切られた。権力よりも普通の生活を選んだ為に裏切り者とされた。都へ戻りたかった。」
私が占い師に過去世を見てもらった時、「夫が早くに死んでしまうということは、現世でもそうなるんですか?」と尋ねました。すると時代が全く違うのだから、生死に関しては気にする必要はない、との説明でした。
にも関わらず、この雅清の言葉を知ってから暫く、桜衣の気持ちが乗り移ってしまったかのようでした。部屋で余りの切なさに(実際の彼がどうかなっているのではないと頭では分かっているのに)哀しくて胸が張り裂けそうになりました。
小説を読んでも、それ程のめりこまない私なのに…不思議な感覚でした。
実際、彼は以前、家を出たら二度と戻って来れないのではないか、という不安に襲われた事が何度かあったそうです。普通の感覚では理解してもらえないような事ですが、私との余りの共通点に言葉がありませんでした。